講師インタビュー➈伊東卓也先生(英語科)

2020年の講師インタビュー★トップバッターは英語科・伊東先生です。

講師歴25年のキャリアを誇る大ベテランの伊東先生に、趣味の事や学生時代の事、生徒のみんなへの思いなど色んなお話を聞かせてもらったよ。

鉄道と私

まずこの講師インタビューでは、講師の先生方の好きなものだとか趣味なんかのお話を最初に聞かせてもらっているんだけど、伊東先生って何が好きなんやろう。そんな話を聞いたことがなかったので、すごく興味しんしん。

伊東先生って何が好きなんですか?

伊東先生

趣味ねぇ…。息子がポケモン好きだから、スマホに勝手にダウンロードされて歩いて来いとは言われたりしてますけど、それ僕の趣味じゃないし…。

伊東先生

まぁ強いて言うなら、子供の時からけっこう電車が好きなんですよ。

それは知りませんでした。私もけっこう電車が好きなんです。伊東先生は乗り鉄ですか?

伊東先生

乗るのも好きなんですけど、線路がね、好きなんです。

線路が?なるほど線路かぁ。って全然なるほどじゃない。線路?えと、線路が好きってどういうことですか?

伊東先生

例えば線路がねいくつも交差して進路が切り替わるところがあるでしょ?ああいうの見ると萌えるんです。

???

萌えるんですか、そうですか。えと、すみません。どういうことですか?

伊東先生

こういうのです。

あー!!!阪急の西宮北口とかもこんなんありますね、なるほど、たしかに線路が交差しています。

でも、これの一体どこが萌えポイントなんですか?

伊東先生

次の駅じゃないところに向かう線路っていったいどこに繋がってるんやろうって気になって。

何でも子供の頃は、お父さんにお願いして線路を追っかけて、行けるところまで車で追跡していたという伊東先生。とにかく駅じゃないほうに向かう線路の続きがどうなっているのかが気になって仕方がないのだそう。

伊東先生

車庫とかね、回送列車を見ると血が騒ぐんです。

地図とかで線路が途中で途切れたりしているのを見ると、どうなってるのか確かめるべく実地調査に赴くこともあるんだって。

伊東先生

前面展望って聞いたことありますか?

え?前面展望?何ですか、それ?

伊東先生

電車の運転席の後ろから前方をひたすら撮影し続けた動画なんですけど…

伊東先生

これを見ながら一杯やってます。

え?これを見ながらお酒を召し上がる?

伊東先生

そうですね。もちろんいつもじゃないですけど。

鉄道好きってけっこう色んなタイプがいて、自分が管轄しない領域の話だと全く分からないんだけど、いやー、全く分からない。すごいな、奥深いな、鉄道の世界。

ボコボコにされた採用面接

京都大学在学中から学生講師として高進でのキャリアをスタートされた伊東先生。何かきっかけはあったんでしょうか?

伊東先生

今思えば不思議なんですけど、ある日京都の町中を自転車で走ってて、急に閃いてバイトしなきゃって思ったんです。

その直前までバイトを特に探しているわけでもなかったのに、急に焦燥感にかられて本屋の前で自転車を止め、衝動的に買った求人雑誌に載っていたのが高進だったのだそう。

伊東先生が新人だったころの高進って、講師採用の倍率ってすごくなかったでしたっけ?

伊東先生

そうですね。面接で模擬講義があったんですけど、30人くらいいたと思います。

すごいなー、覚えてはるんですね。私なんかすっかり忘れちゃいましたけど。

伊東先生

めちゃくちゃ覚えてますよ。青T(青田先生)にものすごく怒られたんです。

え?面接ですよね。伊東先生って高進の卒業生じゃないですよね?その日初めて会った青Tに面接で怒られたんですか?

伊東先生

いや、怒られたっていうか、僕がね、模擬講義で間違った事を言っちゃったんですよ。

伊東先生

で、その間違ったところについて青Tに色々質問されるんです。でも最終的には言葉に詰まるじゃないですか、僕が間違っているから。そこで、はい!あなたは間違っていますって言われて。

あははは、めっちゃ面白い!さすが青T。それを面接で言われたんですよね?

伊東先生

そう、面接で。ハイ、落ちたーって思って。他の子たちめっちゃ上手かったし。

それは思っちゃいますね。でも合格した。

伊東先生

そうなんです、あとで青Tから電話がかかって、採用です、って。あれだけたくさん採用試験受けてたのに、僕ともう一人くらいになってしまっていて…。

びっくりされたでしょう?

伊東先生

びっくりしましたよ。青Tに何で僕が採用されたんですか、って聞きましたもん。

そしたら青田先生は何ておっしゃってたんですか?

伊東先生

自分が興味のない人にあれこれ言っても仕方ない。自分が先輩講師として教えていきたいと思ったから、どういう風に考えたのか知りたくて聞いたんだって。

なるほど、そういうことだったんですね。それを聞くと確かに納得。でもその面接当日のことを想像すると、申し訳ないけど笑ってしまう。

伊東先生

後日、青Tにめっちゃ怖かったですよって言ったら「本当にごめん」って謝ってくれました(笑)。

私なんかは高進の卒業生だからある程度は高進がどういう所かっていう認識があるけど、伊東先生はそうじゃないですもんね?

伊東先生

高進どころか、僕は塾にも行ったことがなかったので、塾自体のイメージが全然分からなくて。でも、そこはちゃんと青Tが面倒を見てくれました(笑)。

こういうところに高進の原点がある気がします。なかなか先輩講師が後輩講師に指導方法を手取り足取り教える塾ってないと思うねん。

生徒のみんなが受けてくれてる高進の授業って、こんな風に代々受け継がれてきたものと、それを教わった先生が自分の中でブラッシュアップさせて作り上げて行ってるものなんだよね。

苦悩の日々があってこそ

「上野さんは僕が昔体調を壊していたことって知ってますか?」

インタビューの中で、私にそう聞いた伊東先生。一瞬、知らなかったことにした方がいいのかな、とも思ったけど、正直に覚えていますと答えました。

私がまだ学生講師の時だったから、かれこれもう10年以上も前の話なんだけど、伊東先生がものすごく痩せられた時があって。

伊東先生

研究と高進のどっちに集中するかでものすごく迷ってしまって、鬱になってしまって。

京都大学農学部を卒業後、院に進学し、研究者を目指してはいたものの、どうしても高進の方が楽しく思えてしまい、研究室の教授や先輩たちからはバイトを優先させることに対して白い目で見られてしまって、そんな板挟みの日々が少しずつ伊東先生の心をむしばんでいったようで…。

伊東先生

モノが食べられないし、外に出られない。高進に行くのも、この電車乗り遅れたら遅刻っていう時まで動けなかったんです。

そうだったんですね。そんなに大変だったとまでは知らなかったです。どんな風にして快復に向かわれたんですか?

伊東先生

もちろん病院にも行って、薬を処方してもらったりもしてたんですけど、それもやっぱり青Tなんですよ。

伊東先生

ある日、青Tから電話がかかって来て、「伊東T、今からごはん行ける?」って。

その時、伊東先生は京都にいたそうで、その旨を青田先生に伝えた所、青Tは「実はもう京都まで来てるんや」と。

伊東先生

それまで僕の体調について特段なにか聞くわけでもなかったのに、車を飛ばして京都まで来てくれて、ただ話を聞いて「それはつらいね」って言ってくれたんです。その時が一番しんどい時だったんですけど、それを境に少しずつ良くなっていったのかな。

伊東先生

あと、不思議なんですけどまったく食べられなかったのに、高進の授業の後、みんなでごはん行くじゃないですか?あの場でだけは食べられたんですよね。必要な栄養は全部あそこでとってたのかも(笑)。

自分がしんどい時って本当に周りが見えなくて、味方がいないように思えるけど必ず自分のことを気にかけてくれている人はいて、それに気付くことができたら絶対に人は大丈夫なんじゃないかなぁと私は思っています。

がんばればがんばるほど、自分を追い込んでしんどくなってしまう時ってあると思います。私自身もあったし、生徒のみんなを見ていても、そう感じることが多々ある。

伊東先生って、本当にいつもそういうつらい思いを抱えている子に本当に優しく寄り添って接しておられて、私は伊東先生のそういう所をすごく尊敬しているんだけど、今回のお話を聞かせてもらってご自分の経験があったからこそなのかなぁという風に思いました。

鶏口となるも牛後となるなかれ

「もともと僕は文系なんです。」

そう笑いながら伊東先生が教えてくださった座右の銘はまさかの『史記』が原典。「大きな組織の末端でいるよりも、小さな組織でリーダーシップをとれる人材であれ」という意味です。

伊東先生

高進も好きだし、生徒も好きだと言うのは自分の中ではかなりはっきり分かっていたんですけど、10年やってた研究をここで諦める?諦めていいのか、っていう葛藤がずっとあったんです。

もちろんそうだと思います。その気持ちは私にも想像できる。

ただ、この「こうあらねばならない」っていう固定観念みたいなものが鬱を患う人にとってはよくないものらしく、この思いが最後まで伊東先生を苦しめていたそう。

そんな伊東先生が考え方を変えるきっかけになったのが、この「鶏口となるも牛後となるなかれ」という言葉。

伊東先生

この言葉はかなり僕にとっては響いた言葉で、あぁ別に大学って言う大きな組織での研究って仕事にこだわらなくても、自分のクラスの生徒たちに夢を託して、彼らの次のステージまで引っ張ってあげたらいいやんって。

伊東先生

そう思えたら急に気持ちが楽になって、その日のうちに不動産屋に行って、速攻で京都から大阪に引っ越しました(笑)。

「鬱になってよかった」

伊東先生はそう断言します。こんなセンシティブなお話をブログにあげていいのか、もちろん伊東先生にはお伺いしました。

伊東先生

全く問題ないです。この経験があったからこそ、生徒の気持ちが分かるようになったから。

そう言って快諾してくださいました。

生徒が主役。

インタビューを通じて何度となく、伊東先生が口にしておられた言葉です。この記事を読んでくれているみんなの中にも、出口の出ない暗闇にいるような悩みを抱えている人がいるかもしれない。

でも、ふとした発想の転換で新しい自分に出会って、今までよりも強くて優しい自分になれるんだっていうことを伊東先生のお話を聞いて実感しました。

次回の講師インタビュー

それでは伊東先生、次回の先生のご指名をおねがいします。

伊東先生

数学科の藤川先生でお願いします。

なるほど、藤川さんですね。かしこまりました!ちなみに理由は…?

伊東先生

単純に生態が気になるというか…。

あははは!めちゃ分かります。昔の研究者としての血が騒ぐんですね。いやー、彼女はなかなかの逸材ですからね。生物学的な解析が必要だと思います。

伊東先生

高進出身じゃないのに、なんであそこまで高進に馴染めるのか、すごいなと思って。しかもあの数学科で。

本当にそうですよね。それは本当にそう思う!残念ながら絶対に私の力量ではすべてを明らかにするのは不可能だとは思いますが、次回は私を含め、高進講師陣にも非常にファンの多い数学科きっての不思議少女・藤川先生のインタビューをお届けしたいと思います。

伊東先生、本当にありがとうございました!!